インプラント治療は手術が必要になりますが、手術と聞くだけで、恐怖心をお持ちの患者様が多くいらっしゃいます。
手術自体は局所麻酔で痛みも無く受けていただく事ができます。術後の痛みも個人差はありますが、骨の造成を伴わない単純なインプラントの手術なら、通常の抜歯程度で、術後数日で落ち着いてきます。
入院の必要も無く、翌日から通常の生活をしていただけますのでご安心ください。大きな手術でも術後の痛みについては薬でコントロールできるので必要以上に怖がっていただかなくても大丈夫です。
手術の安全性
さて、手術自体の安全性ですが、ミスが起きる場合の主な原因として以下の項目が挙げられます。
1)未熟な外科手技による不適切な埋入
2)不十分な解剖学的知識による神経・血管・粘膜の損傷
3)骨の状態によるもの(硬すぎる・軟らかすぎるetc)
1)に関しては、豊富な知識と経験を持った歯科医が手術を担当する必要があります。
2)に関しては、手術前に十分な診査診断が必要です。ごく単純な手術を除けば、CT撮影による診断は必須だと考えています。
3)に関しても、ある程度はCTから判断できます。
ただいずれにしても手術ですから、どうしてもその場でなければわからないこともあります。また、例えば成功率95%と言っても、20本に1本はうまくいかないということです。
最大限成功率を高めるために日夜研鑽を積み重ねていますが、生体を相手にする以上100%はあり得ません。このような場合には埋入したインプラント(フィクスチャー)を抜去し、再手術を行えばほぼ問題はありませんし、それにかかる追加の費用も必要ありません。
使用インプラントの安全性
現在使用されている歯科用インプラントは純チタン、チタン合金を材料としたもので、骨結合型が一般的です。
チタンは無害で発癌性もなく腐食しません。
また、組織との親和性が高く、アレルギー反応を生じさせません。
したがって、材料が原因で寿命が短縮する事は通常ありません。
手術の制限
また、以下の条件に当てはまる場合には手術が制限あるいは不可能な場合があります。
◆重度糖尿病や心臓疾患など、重度の内科的疾患をお持ちの方 →病気とインプラント
◆妊娠中の方
◆顎骨が極端に減少している方で、骨移植手術にご同意いただけない場合
◆骨の成長が終わっていない方(18歳未満)
インプラントが入った後の安全性
インプラント治療が終了し、無事上部構造(いわゆる歯)が入った後の安全性とは、要はそれがいつまでもつのかということです。
いったんインプラントが生着した後に経年的に悪くなる原因は主に、①炎症か、②過大な応力です。
1)炎症
インプラントは金属製ですから、虫歯になることはありません。しかし歯周病になることはあります。
これはインプラント周囲炎と呼ばれ、インプラント周りの骨に炎症がおこり、骨が吸収することです。骨の吸収が進むとインプラントが抜けてしまうこともあります。
インプラント周囲炎を防ぐためには、日々の家庭での十分なお手入れと、歯科医院でのプロフェッショナルクリーニングが必須となります。
2)過大な応力
簡単にいえば、インプラントの強度以上の力が加わることで、インプラントが壊れたり、インプラント周囲の骨が吸収することです。
・歯ぎしりなどのかみ合わせによるもの
歯ぎしりや食いしばりなどの習癖が、歯を支える歯周組織に破壊的なダメージを与える事があり、インプ ラントの寿命にも影響することがあります
・経済的な理由による無理な設計
必ずしも失った歯の本数だけインプラントを入れる必要はありません。しかし費用を削減するために、 必要な本数より少なくインプラントを入れれば、将来負担がかかりすぎることにより、せっかく入れたインプ ラントを失う可能性があります。
また、両側の奥歯がないのに片側だけインプラントを入れたのでは、そちらの側だけに負担がかかり寿命が短くなるかもしれません。
特に審美性を重視するあまり、奥歯がないのに前歯だけインプラントを入れるのは最悪で、必ずそのインプラントを失うことになります。
・インプラントのサイズの選択ミス
インプラント治療とは簡単に言うと、あごの骨の中にチタンの杭を植えることです。杭を植えるのですから、長くて太い杭のほうが長持ちするに決まっています。
でもその杭を植える土の部分の顎の骨がやせてしまっていたり、低くなっていたりすると十分なインプラントのサイズを確保できずに、寿命が短くなることがあります。
その場合は土の部分を増やす必要があり、顎の骨の再生治療が必要とされることが多いです。
特に東洋人の場合、西洋人よりも骨格が華奢で、あごの骨も薄く対応に苦慮する場合が多々あります。
今食べにくい、格好が悪い、これを手早くなんとかしてほしい、という気持ちは十分よくわかります。
でも苦労して費用をかけて入れたインプラントを早くに失うことになってしまったら何にもなりません。
そのために今何をするべきか、どういう治療が必要なのか、という視点でぜひ考えてみてください。