病気があって、インプラント治療に不安を感じておられる方も多いと思います。
以下に代表的な病気とインプラントについて考えてみたいと思いますが、担当歯科医とよく相談することが何より大切です。

代表的な病気とインプラントについて

インプラントと糖尿病

糖尿病の患者様の治療で考慮する点は、主に以下の2点でしょう。
①糖尿病では細菌の侵入に対して抵抗力が弱く、「傷が感染しやすい」・「創口が治りにくい」という点です。
すなわち手術を行った部位が感染しやすかったり、傷の治りがやや遅れる場合もあります。
しかし抗生物質の適切な内服など術前から感染対策を十分にしておけば、問題なくインプラント手術は可能です。
次に
②糖尿病の方は血糖降下剤の内服やインスリンの自己注射をなさっている場合があります。
この場合に問題となるのはインプラント手術当日の内服や自己注射のタイミングです。
手術の後でご飯を召し上がりにくくなった場合、いつも通りに決まった時間に内服や注射を行ってしましますと、血糖値が下がりすぎてしまい低血糖症状が出現してしまいますので、担当歯科医の十分な医学的知識が不可欠です。
一般的に、インプラントは以下の基準となる値を参考に治療が行われます。

術前のコントロール基準値

1血糖値(空腹時 150mg/dl以下・ 最高値300mg/dl以下)
2HbA1c 7~8%以下
3尿ケトン体(-)
4重篤な合併症がない(腎不全・心血管病変など)
なお、重症の場合には必要に応じて患者様の内科主治医と連絡を取り、患者様の不利益にならないよう様々な手段を講じればインプラント手術は安全に行えます。

インプラントと高血圧

一般的に高血圧症とは、最高血圧140mmHg以下・最低血圧90mmHg以下と定義されています。
インプラントは、高血圧患者様になんの準備もせずに治療を行うと、緊張感や不安感のため血圧が10~30程度上昇することがあります。最高血圧が190以上に達すると術中気分が不快になったり動悸を訴える患者様がいらっしゃいます。
また、局所麻酔薬の中に血圧を上昇させる成分が添加されています。
重度の高血圧症の場合には、患者様の内科主治医と連絡を取り、個々に対応する必要があります。

インプラントと心臓病

狭心症・心筋梗塞に罹患されたことのある患者様は、血液をサラサラにするために小児用バファリンやワーファリンなどを内服されていることが多いです。
これらの薬により手術中に血が止まりづらいことがあります。
以前までの学説では、これらの薬を1週間程度中止しなければ手術ができないと言われていましたが、最近では内服を継続したまま手術を行っても、止血操作が適切に行える場合は問題ないとされています。
いずれにせよ、狭心症・心筋梗塞心臓弁膜症などで人工弁置換術を受けた方、重症不整脈で体内型ペースメーカーを入れていらっしゃる方の場合には内科主治医と密接な連携をとり、手際のいい手術を行う必要があるでしょう。

 インプラントと脳梗塞

脳の血管が詰まる脳梗塞になりますと、片方の手が麻痺することがあります。このような患者様が複雑な入れ歯をしていますと、ご自身ではずしたり洗ったりすることが困難になり、ご家族の方のお手を煩わせたり、不潔になった義歯をつけっ放しにせざるをえなくなります。 こんな時、インプラントのほうが安心かもしれません。
また、脳梗塞患者さんは嚥下障害(食べ物を飲み込みずらくなる)を伴っていることもあり、こんな方が部分入れ歯をしていますと、これを飲み込んでしまったり、肺の入り口にひっかかった場合は窒息する危険性もあります。
また、インプラント手術の際に気を付ける点は、脳梗塞の方は血をサラサラにする薬をお飲みになっている場合が多いので、内科担当医との連携をとって安全にインプラントをすることが望まれます。

インプラントと骨粗鬆症

骨粗鬆症は、腰・腕・カカトの骨などの骨密度および量的な減少を特徴とする疾患です。
治療薬としてビスフォスフォネート製剤が使用され、インプラントに限らず、お口の中の手術を受けた後の傷が治りにくい場合があり、世界的に問題となっています。
骨粗鬆症と診断されてなくても、骨折の予防に投与されている場合も多く、心当たりのある方は必ず担当歯科医に申し出てください。

インプラントと腎臓病

腎臓病の患者様は、感染に対して抵抗力が低下する場合がありますが、インプラント治療はほとんど可能です。
腎不全で血液濾過透析治療を受けている方は、内科主治医と相談を必要とする場合があります。

インプラントと肝臓病

術後に内服していただく抗生剤により肝機能が低下する場合があります。
この場合のインプラントは、肝代謝性ではなく、腎排泄性の抗生剤を選択する事によって治療を行うことが可能です。

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