咬み合わせの治療
咬み合わせとは
咬み合わせの治療について
◇ 咬み合わせとは
人間は下あごを上下に動かすことで、下の歯を上の歯に噛み合わせてきます。
さらにあごは上下だけではなく左右にも動きますから、咬み合わせとは、あごを上下に噛んできた上下の歯の接触とあごを左右に動かした時の上下の歯の接触の事を言います。
咬み合わせは、
① あごの関節(顎関節)
② あごを動かす筋肉(咬合筋)
③ 歯
④ 歯を支えている骨(歯槽骨)
の4つが関連しあって構成されます。
咬み合わせが悪くなると、あごの関節の動きが悪くなったり、口を大きくあけるとあごを動かす筋肉にいたみがでたり、歯が大きく磨り減ったり、歯が割れたり、歯を支えている骨が吸収したり、歯がぐらぐらしたりなどの症状がでる事があります。
咬み合わせに対し、歯並びとは、専門用語で「歯列」といい、ただ単に歯の位置の連続性の事を言います。
よく誤解されますが、歯並びが悪い=咬み合わせが悪いではありませんし、歯並びが良い=咬み合わせが良いでもありません、歯並びが悪いのと、咬み合わせが悪いとでは意味合いが大きく異なります。
歯並びが悪くて問題となるのは、見た目が悪いという審美性の問題と、物がはさまる、歯ブラシがとどきにくいなどの清掃性の問題です。
歯並びは矯正治療や補綴処置(クラウンやブリッジ)によって改善できますが、歯並びを治すと噛み合わせも当然変わります。歯並び改善の治療は咬み合わせを考えて治療をする事が大切となります。
◇ 顎関節症
あごが開かなくなったり、あごが動かしにくかったり、あごを開けると痛みがでたり、あごの関節がカクカク音が鳴ったりなどあごに症状がでる事を顎関節症(がくかんせつしょう)と言います。
咬み合わせから顎関節症を引き起こすこと思われがちですが、顎関節症=悪い咬み合わせではありません。顎関節症の一番の原因は精神的ストレスだといわれています。
精神的ストレスから歯軋りやくいしばりをするようになり、顎関節や顎の筋肉にダメージをあたえます。その際の治療法としてマウスピースを装着してなるべく顎関節や顎の筋肉に負担が行かないようにしますが、極度のストレスがある際はマウスピースによる治療をしても期待通りの成果をあげられません。
一番の治療法は精神的ストレスからの開放です。
精神的ストレスからではなく、咬み合わせが悪いがために顎関節に負担が生じ、顎関節症を引き起こしている場合ももちろんあります。
その際は咬み合わせの治療を行うことによって、症状の回復、改善が望めます。
顎関節症
口を開けようとすると耳の少し前の顎の関節で「カクンカクン」と音がしたり、顎周囲の筋肉が痛むなどの症状や、口を大きく開けることができないなどといった症状がでることを顎関節症(がくかんせつしょう)といいます。
咬み合わせから顎関節症を引き起こすこと思われがちですが、顎関節症=悪い咬み合わせではありません。
その症状の原因として挙げられるうちのいくつかを、ここでご紹介いたします。
顎関節症の原因
【食いしばりや歯ぎしり】
ストレスなどで歯を食いしばったような状態が長く続くと筋肉が緊張するため、顎関節に負担がかかってしまいます。
【物を食べる時の噛み方】
食事の際に、歯の片側だけを使い噛み続けると筋肉に歪みができ、顎がずれてしまいます。
【姿勢が悪い】
姿勢が悪いことが顎にも影響してきます。猫背は顎も奥に入ってしまうのでよくありません。
【咬み合わせの悪さ】
咬み合わせが悪いと、物を食べるたびにそのズレが影響してくるので顎関節症の原因にもなりやすく、逆に顎関節症が原因で咬み合わせが悪いということもあります。
【外部からの圧迫】
頬杖をついたり、うつ伏せになって眠ったりすると、外部から顎が圧迫されてしまいます。
何度も繰り返すことで少しずつ顎が歪んでしまいます。
全身に出る影響
顎関節症の影響から頭痛、肩や首のコリ、目眩、耳鳴り、不眠症、自律神経失調症、うつ病などの症状が出る場合があります。
特に顎関節の歪みからくる頭蓋骨の歪みによって、自律神経失調症やうつ病などになる可能性があるといわれています。
また、虫歯のように歯が痛くなることもあります。歯医者さんで虫歯はないと言われても歯が痛い場合、顎に原因がある可能性が高いです。顎関節症により神経が圧迫され、虫歯の痛みと勘違いしてしまうのです。
このように顎関節症になると体のいろんな場所に症状が出てしまうことがあります。自律神経失調症になると人間が本来持っている自然治癒力が低くなりますので、体が弱まっていき、全身に悪影響が出てくる原因となります。
顎関節症の治療
前述したように、精神的ストレスから歯軋りやくいしばりをするようになり、顎関節や顎の筋肉にダメージをあたえて顎関節症を発症している場合があります。その際の治療法としては、マウスピースを装着してなるべく顎関節や顎の筋肉に負担がかからないようにすることがあります。ただストレスが原因であれば、原因を除去することなしにマウスピースによる治療をしても、期待通りの成果をあげられないかもしれません。
精神的ストレスからではなく、咬み合わせが悪いがために顎関節に負担が生じ、顎関節症を引き起こしている場合もあります。その際は咬み合わせを修正するようなギプスのようなものを作成し、一定期間使用してもらうことで症状の改善を見ることが多いです。
場合によっては、咬み合わせ全体の治療を行うこともあります。
咬み合わせを悪くする原因
咬み合わせは、ちょっとした習慣や仕草によって悪くなってしまうものです。咬み合わせの悪さは歯周病を進行させたり、顎の調子が悪くなる原因にもなりかねませんので注意しましょう。こちらでは咬み合わせを悪くする原因についてご紹介しますので、当てはまる節がある方は予防に努めましょう。
咬み合わせを悪くする原因はどんなものがある?
親知らず
「まっすぐ生えてきているみたいだし、痛くもないし」と放置してしまいがちな親知らずですが、実際にはまっすぐじゃないことがほとんどです。そのまっすぐではない親知らずが、他の歯や歯ぐきに圧力をかけて咬み合わせを悪くしてしまいます。特に親知らずが明らかに横に傾いている方は、もっと大きな圧力が掛かっていることになります。
また臼歯は咬み合う歯がないと伸びてくる性質があります。上下の親知らずが咬み合わない状態だと、正常に生えてきている歯の方が伸びてきます。すると上下に咬み合う分には問題ないのですが、擦り合わせの時にそれが引っ掛かって、顎の動きが悪くなったり頭痛の原因になったりします。
心当たりのある方は歯科へ相談することをおすすめします。
抜けた歯の放置
歯を抜いてそのままにしておくと、隣の歯が傾きます。また前述したように歯は伸びる性質があるので、抜けた歯の咬み合う歯が伸びてきます。これは咬み合わせを悪くする大きな原因となりますので、抜けたところは必ず適切な処置をしましょう。
ストレス
日常的にストレスを抱えていると、それを発散するために無意識に歯ぎしりや食いしばりという行動をとってしまいます。ガムを咬むときの数倍もの力がかかるとされているため、十分な注意が必要です。
自分なりのストレス発散法を見つけてください。
噛む回数の減少
忙しくて食事時間が短かったりインスタント食品などの柔らかいものばかりを好んで食べていると、必然的に噛む回数は減少します。すると歯を支える力が弱まり、歪んだりずれたりして咬み合わせを悪くしてしまいます。特に小さなお子さんに柔らかい食品ばかり与えていると、咬み合わせだけでなく顎の未発達の原因にもなりかねませんのでご注意ください。
噛み癖
何か食べるとき、いつも右や左のどちらか片方だけで噛んでしまっていませんか。こうした咬み癖があると、片側だけ筋肉が異常に発達し、顎のバランスが崩れて咬み合わせを悪くしてしまいます。それだけでなく右の顔と左の顔がまるで別人のように見えたりすることもあるためご注意ください。
態癖
頬杖、腕枕、うつ伏せ寝などは顎に力を加えます。短時間なら問題はないのですが、それが癖になっていて持続的に力が加わり続けると、顎の位置がずれたり、歯並びが変形することがあります。
上記の原因のほかに、歯並びが悪いと当然咬み合わせが悪くなる確率が高くなります。でも逆にきれいな歯並びでも咬み合わせの悪い方はたくさんおられます。なんとなく咬み合わせが悪い感じがされる方や顎の調子の悪い方は、お気軽にご相談ください。
咬むという行為が与える影響
同じ咬むという行為であっても、「よく咬む」「咬みしめる」ではそれぞれ与える影響が異なります。
歯の健康を保つためには、普段自分がどのような咬み方をしているのか見直す必要があるでしょう。
咬むことの良い影響
【虫歯・歯周病の予防】
よく咬むことで唾液がたくさん分泌されます。唾液には虫歯を作る酸を薄める働きがあるため、虫歯予防に繋がります。
また、よく咬むことで歯ぐきへのマッサージ効果が期待できるため、歯周病予防にもなるのです。
【脳の活性化・全身への好影響】
咬むという行為により頭部の骨や筋肉が動き、血液の循環が良くなります。そうすると脳神経が刺激され、脳の働きが活発になります。また咀嚼のリズムはセロトニン神経を刺激するとされています。セロトニンは心のバランスや精神を安定させる働きをもつホルモンです。セロトニンが増えると心がリラックスし、集中力が高まるのです。
歯がたくさん残っていてよく咬める人は、脳が活性化されやすく認知症になりにくいというデータがあります。また80歳で20本以上歯が残っている人はそうでない人に比べて全身の病気にかかる医療費が20%以上も低いというデータもあります。
【ダイエット・小顔効果】
よく咬むことで大量に分泌される唾液は、食べ物を糖に分解する働きがあります。糖分は血液に吸収され血糖値が上昇し、満腹中枢が刺激されるため少ない量でも満腹感を得られ、食べ過ぎるということがなくなります。
また、よく咬むということは、顔の筋肉を使っているということです。顔の筋肉の70%は口の周辺に存在しているため、よく咬むことで血行が良くなりむくみ改善になりますし、顔の筋肉を鍛えることでたるみ防止にもなります。
咬みしめすぎることの悪い影響
【歯周病のリスク】
咬み合わせが悪い状態で歯を強く咬みしめると、一部の歯に負担が偏りかねません。
負担がかかった歯は通常よりも大きくぐらつき、歯ぐきとの境目が広がり歯周ポケットが形成されます。
歯周ポケットにはプラークが溜まりやすいため、歯周病のリスクが大きくなってしまうのです。
【歯が早くすり減る】
永久歯は徐々にすり減っていくことが当たり前ですが、咬みしめ癖があるとより早くすり減ってしまいます。
歯がすり減ると咬み合わせが狂うこともあります。咬む位置が不安定になると顎にまで影響を及ぼし、顎関節症を発症する場合もあるのです。
【頭痛・肩こり】
歯を咬みしめることによって、こめかみから顎にかけての筋肉が目や耳の神経も圧迫してしまいます。
これが長期にわたってしまうと、頭痛や肩こりなどを引き起こしてしまうのです。他にも咬みしめ癖によって、耳鳴りや目の奥の痛み、動悸、息切れなどの不定愁訴が出ることがあります。
適切な咬み合わせで健康な歯を保とう
同じ咬むという行為であるにも拘らず、程度の違いによって良い影響もあれば悪い影響もあるということは知っていただけたでしょう。しかし、こういった咬みしめ癖などは無意識に行っていることが多く、気づいたら歯の痛みや顎関節症などの影響が出ていたという方も少なくありません。
咬み合わせというのは歯の健康に大きく関係しているため、いつまでも綺麗で健康な歯を維持するためにも咬み合わせを良くすることがとても大切なのです。また全身の健康のためにも適切な咬み合わせが必要です。